確認申請4号特例の縮小について

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確認申請4号特例の縮小

建築確認・検査に関わる「4号特例縮小法案」が、
2022年の通常国会で成立しました。
このニュースは一般の消費者にはさほど注目されていませんが、
建築に携わる事業者、なかでも小規模の木造住宅に携わる
設計事務所や工務店にとっては、非常に大きなできごとです。
また、これからマイホームを建てようとしている方にも関わってきます。

今回は、2025年4月からの施行が予定されている建築基準法の
改正による4号特例の縮小について、概要やこれまでの経緯、
今後の影響などについて解説していきます。

そもそも4号特例とは?

現行の建築基準法では、第6条第1項第4号に該当する
建築物は、4号建築物と呼ばれています。
4号建築物に該当するのは、木造は2階建て以下、
延べ床面積500平米以下、軒高9m・高さ13m以下の
すべてに当てはまり、学校や病院、店舗、共同住宅などの
特殊建築物の場合は延べ床面積200平米以下の建築物です。
木造以外の構造では、平屋で延べ床面積200平米以下の建築物が該当します。

4号建築物は建築確認・検査が必要な範囲が限定され、
建築確認・検査が必要な場合でも審査が簡略されていることから、
4号特例と呼ばれています。

4号建築物は都市計画内に建築をする場合のみ、建築確認・
検査が必要です。
都市計画区域内であっても、大規模の模様替えや大規模の修繕は
建築確認・検査が不要です。
都市計画区域外は建築、大規模な模様替え、大規模な修繕の
いずれも、建築確認・検査は不要となっています。

また、都市計画内の建築には建築確認・検査が必要ですが、
審査省略制度の対象となり、建築士が設計や工事監理を行った
場合には、構造関係規定などの審査が省略されています。

4号特例の縮小と省エネ基準の適合義務化

2025年4月の建築基準法の改正によって、4号建築物は
改正法の第6条第1項第2号に該当する新2号建築物と、
第6条第1項第2号に該当する新3号建築物に分かれます。

現行の4号建築物のうち、木造2階建てや木造平屋でも
200平米を超える建築物は新2号建築物となります。
新2号建築物はすべての地域で建築、大規模な模様替え、
大規模な修繕に建築確認・審査が必要となり、審査簡略制度の対象外です。

また、構造を問わず、平屋で延べ床面積200平米以下の
建築物が新3号建築物となります。
新3号建築物は都市計画内に建築する場合のみ、建築確認・
検査が必要で、審査簡略制度の対象です。
現行と同様に建築確認に関わる図書の一部省略が認められます。

つまり、現行の4号建築物はなくなり、4号建築物と同様の
取り扱いとなる新3号建築物は平屋で延べ床面積200平米以下の
建築物に縮小されます。
そのため、今回の建築基準法の改正は4号特例の縮小と呼ばれているのです。

さらに、住宅を含むすべての建築物が省エネ基準への適合を
義務付けられるため、新2号建築物に関しては、建築確認申請の
際に建築確認申請書・図書に加えて、構造確認規定等の図書と
省エネ関連の図書の提出が必要となります。

2025年4月からの改正によって、新たに確認申請に必要となる
図書は、2023年秋ごろに建築基準法施行規則で明示するとされています。

4号特例縮小の経緯とは

建築基準法の改正によって4号特例が制定された1983年当時、
新築住宅着工件数が増加していました。
そのため、建築確認や完了検査を担う行政職員が不足し、
建築主事の業務量の多さや審査期間の長さが問題となっていました。
そこで、行政機関の負担の軽減や建築確認に関わる審査期間の
短縮を図るため、4号特例によって建築確認に関わる審査が
簡略化されました。
4号特例の創設によって建築確認の審査期間が短縮され、結果として
バブル期に住宅業界が盛り上げる要因の一つとなったとされています。

その後、1999年に施行された改正建築基準法によって、
民間の検査機関による審査が行われるようになりました。
行政だけでは十分に検査を実施する体制を構築できないことによるものでした。

しかし、2005年にマンションなどの耐震構造計算書に偽装が
あったことが発覚した耐震強度偽装事件により、民間の検査機関で
十分な審査が行われないことがあることが発覚し、検査機関による
審査レベルのばらつきが問題となりました。
また、4号特例が適用されている木造住宅においても、審査の不備が
発覚する事態となりました。

こうした経緯から4号特例の廃止が議論されるようになり、
2006年には4号特例廃止の法案が出され、国土交通省は2009年まで
4号特例を廃止することを発表しました。
しかし、建設業界の反発や経済の低迷などの要因や、耐震強度
偽装事件を受けて建築確認の厳格化が図られたことによる混乱から、
2010年には4号特例の継続が発表されました。

一方で2009年には住宅瑕疵担保履行法が成立しましたが、
4号特例が設計瑕疵を立証する妨げとなるケースが目立ちました。
建築確認で構造関係規定の審査が省略されているため、任意で
設計者から構造計算書の提出を受けられなければ、構造に関わる
設計の瑕疵を立証するための資料が入手するのが困難なためです。

そのため、2018年に日本弁護士連合会が国土交通省に
「四号建築物に対する法規制の是正を求める意見書」を提出しました。

2020年には建築士事務所の図書保存制度が見直され、4号建築物を
含めたすべての建築物に関して、配置図や各階平面図、立面図、
断面図、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図、構造計算書、
工事監理報告書などの保存が義務付けられています。

こうした経緯を経て、長年にわたって廃止が検討されてきた4号特例が
2025年4月から縮小されることとなったのです。

4号特例の縮小でどんな影響がある?

2025年4月からの4号特例の縮小は「4号特例の廃止」という
言い方もされています。
日本の住宅の多くは木造2階建てであり、ハウスメーカーや
工務店によっては施工実績のほとんどを木造2階建てが占める
会社もあることから、実質的な廃止とも受け止められているためです。

4号特例の縮小によって、設計事務所や工務店などは木造2階建ての
設計で、これまで不要であった構造関連図書の作成が必要となります。
また、構造関連図書とそのほかの図面の整合性を確保するために、
設計に時間を要することも考えらえれます。
こうした点に加えて、省エネ関連の図書の提出も必須となることから、
設計者の業務負担が増加します。

多くの設計事務所や工務店などは、作成する設計図書が増加した分を
設計費用に反映すると考えられるため、家を建てる施主にとっては
コストアップにつながります。
また、確認申請が下りるまでの期間がこれまでよりも長くなり、
工事に着工までの期間が延びることが想定されています。

しかし、こうした改正は施主にとってネガティブなことではありません。
4号特例の縮小は、建築確認・検査制度の本来のあり方に戻るものです。
4号特例の縮小によって、木造2階建てではこれまでよりも構造を
重視した設計が進められることが見込まれています。
建築基準法や関連法令を遵守した安心で安全な住まいづくりにつながるため、
施主にとってもプラスになると考えられます。

おわりに

すべての家が長く安心して住み続けられるものになっていくために、
4号特例の縮小は大きな転換となります。
ただし、従来よりも設計や建築確認申請の審査に時間がかかることを
踏まえて、家づくりを考えている方は早めに建築家などに
相談してみてはいかがでしょうか。

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