地盤と建物基礎の話

地盤と建物基礎 その他

基礎は建物の土台となる

家づくりにおいて基礎は意識を向けることが少ない
部位かもしれません。
しかし、基礎は住宅の土台となる重要な部分であり、
耐震性にも大きく関わっています。

また、地盤の状態は基礎の種類に関係してきます。
今回は基礎の役割や種類、地盤との関係性などについて
紹介していきます。

基礎の役割って?

基礎は地盤と建物をつなぎ、建物の土台となる部分です。
基礎は建物の自重を受けて、荷重を地盤に分散させて
均等に伝える役割があります。建物の荷重が均等に
伝わらなければ、建物は一方向に沈みこむ不同沈下を
起こしてしまい、水平を保てなくなってしまいます。

また、地震が発生したときなど、外部からの横からの力を
受け止めるのも地盤の役割です。

基礎は主に鉄筋コンクリートで構成され、地盤や建物の
荷重によっては杭が用いられることもあります。
基礎工事は基礎を作る工事全般を指します。

先ずは地盤調査が必要

地盤の強さは、敷地の見た目からだけでは判断する
ことはできません。
強固な地盤に見えるケースでも、実際には軟弱地盤
ということもあります。

住宅を建てる前には、建物を安全に建てられる地盤か
どうかを確認し、地盤に合った基礎を選択するために、
基本的に地盤調査が必要です。

住宅を建てるための地盤調査ではスウェーデン式
サウンディング試験が一般的です。
建物の建つ場所の四隅と中央の合計5カ所の強度を
調査するもので、スクリュー状の鉄の棒を突入させて調べます。
軟弱地盤の場合には程度によっては地盤改良が必要です。

地盤改良にはいくつかの方法がありますが、表層改良工法は
表層の2m程度の土を掘り、セメント系固化材を入れた後、
土を戻して撹拌することで地盤を強固にする方法です。

表層改良法では地盤の強度を改良するのが難しい場合には、
何本ものコンクリートの柱を注入する柱状改良法や、鋼管を
用いる鋼管杭工法がとられることがあります。

↑地盤調査(ボーリング試験)

基礎と地盤の関係

基礎は地盤の状態や建物の荷重などによって選択されます。
基礎には大きく分けると、直接基礎と杭基礎という種類があります。
良好な地盤で、地盤の固い層である支持層が地表から浅い位置に
ある場合には、地盤に直接、基礎を設ける直接基礎が用いられます。
木造住宅で用いられるのは多くが直接基礎です。

地盤が軟弱なケースのほか、住宅の場合では重量鉄骨造の3階建て
など荷重の大きい建物を建てるときなどに用いられるのが杭基礎が
採用されています。

基礎の種類

主な基礎の種類には、直接基礎の布基礎とベタ基礎、杭基礎の
支持杭基礎と摩擦杭基礎があります。
それぞれの特徴などについてみていきます。

直接基礎の布基礎とベタ基礎

布基礎は日本で古くから用いられてきた基礎で、
断面がT字を逆さまにした連続した形状の
鉄筋コンクリートを壁や柱の部分に打ち込むものです。

基礎のない部分にも防湿用シートを敷いた上にコンクリートを
敷設しますが、鉄筋は入っていないため、
建物を支えるほどの強度はありません。
布基礎は点と線で建物を支える構造です。

一方でベタ基礎は壁や柱のある立ち上がり部分だけではなく、
床面全体に鉄筋コンクリートの基礎を設けるものです。
ベタ基礎は厚い鉄筋コンクリートで面で建物を支える構造のため、
布基礎よりも耐震性が高いことが特長です。

↑べた基礎の完成風景

かつては、地盤が良好な場合は、木造住宅では布基礎が
主流であり、地盤が弱い場合や住宅の荷重が重い場合などに、
ベタ基礎が用いられてきました。

ベタ基礎は床の部分の全面に基礎が敷設されているため、
不同沈下にある程度抵抗することができます。
しかし、阪神大震災以降は耐震性の観点などからベタ基礎の
普及が進み、今では主流となっています。

また、布基礎は床部分のコンクリートが薄いのにたいして、
ベタ基礎は床面がすべて厚いコンクリートで覆われている
ことから、布基礎よりも湿気による影響が少なく、シロアリに
よる被害を防ぎやすいというメリットもあります。

ただし、布基礎よりもベタ基礎の方がコンクリートや鉄筋の
使用量が多いため、コストはかかります。

杭基礎の支持杭基礎と摩擦杭基礎

軟弱地盤のときなどに用いられる杭基礎のうち、支持杭基礎は
コンクリート製などの杭を支持層まで打設して支えるものです。
摩擦杭基礎は支持層まで杭を打ち込むことが難しい場合に
用いられ、凹凸形状の杭を打つことで、杭と土の間に生じる
摩擦力で支える仕組みです。

↑杭工事の風景

基礎工事の流れとは

住宅を建てるときの最初の工程となる、基礎工事はどのような
流れで行われるのか、順を追ってみていきます。

1:地縄張り・遣り方工事

地縄張りとは、敷地で建物が建つ位置がわかるように、
縄やビニール紐などを張って確認うる作業をいいます。
そして、次に行われる遣り方は建物立つ位置の周囲に
木杭などを使って基礎の高さを示す作業です。
最近では地面の高低差の測定にはレーザーレベルという
機器が用いられています。

2:掘削工事

掘削工事は根切りとも呼ばれ、パワーショベルなどの
重機を使って、基礎の底辺となる高さまで、
土を掘り起こす工事です。
布基礎では基礎を敷設する立ち上がりの部分のみを
掘削しますが、ベタ基礎は基礎の床面全体を掘削します。

3:砕石敷き

掘削した部分に砕石と呼ばれる石を敷いて、ランマー
という機械で地盤を締め固めていきます。
この作業は地業とも呼ばれ、建物がすぐに沈んでしまうのを
防ぐために大切な作業です。
また、地鎮祭の鎮め物を埋めるのはこの工程です。

↑地鎮祭の鎮め物

4:捨てコンクリート

砕石の上に防湿シートを敷いた後、捨てコンクリートを流します。
捨てコンクリートは地面をならしたり、建物を図面通り建てる
ための基準線を出しやすくしたりするなど、作業をしやすくする
ために行うものです。
そのため、捨てコンクリートの強度は建物の強度とは関係なく、
もしひびが入っても心配ありません。
捨てコンクリートが固まったら、基準線の墨出しを行います。

5:配筋

配筋は配筋図に従って鉄筋を組み立てていく工程です。
配筋では鉄筋を一本一本、結束線と呼ばれる細い針金で
結んでいく作業が行われます。
ただし、最近では作業の効率化のためにユニット鉄筋が
用いられることもあり、住宅でもユニット鉄筋が使われる
ことがあります。

↑基礎配筋完了

6:型枠組み・コンクリート打設

型枠はコンクリートを流し込むために、合板や鋼板で
枠組みを組み立てるものです。型枠を組み終わった後、
建物の構造材とつなぐためのアンカーボルトを設置し、
コンクリートを打ち込みます。

流し込んだコンクリートに気泡が多いと強度が得られないため、
バイブレーターという機械で空気を抜く作業を行います。
そして、トンボやコテで表面を平滑に仕上げた後、天端を水平に
するためにレベラーというコンクリートを流し込むこともあります。
その後、ブルーシートなどで養生して一定の日数を置きます。

↑基礎型枠完了、その後コンクリート打設

7:脱型・仕上げ

養生期間が経過したら、脱型と呼ばれる型枠を外す作業を行います。
そして、コンクリートの初期不良やひび割れがないかなど、
仕上がりを確認します。その後、不要な部分のコンクリートを
除去するバリ取りと呼ばれる作業を行うと完成です。

おわりに

布基礎よりもベタ基礎の方が耐震性に優れていることから、昨今では
木造住宅でもベタ基礎が採用されるケースが主流となっています。
しかし、ベタ基礎にすれば必ずしも耐震性が高い家になるわけではなく、
壁量など建物全体のバランスにも左右されます。
家づくりで基礎などについてわからないことがあるときには、
建築家などの専門家に相談してみましょう。

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