建築確認申請とは、建築物を建てる前に、
建築計画が建築基準法や関係法令に適合しているか、
自治体などの確認を受ける手続きです。
家を建てたことがある方、
あるいは建築や不動産に関わる仕事をしている方なら、
耳にしたことがあるかと思いますが、
具体的にどのような手続きを行うのか詳しく知らない方は
多いのではないでしょうか。
今回は建築確認申請とは何か基本的な事柄を押さえたうえで、
申請の流れや必要書類、費用などを解説していきます。
建築確認申請とは
建築確認申請とは、建物の新築工事や
大規模な増改築工事などに着工する前に、
建築基準法や各市区町村の条例に適合しているか
確認を受けるために、
自治体や民間の指定確認検査機関に申請する手続きのことです。
建築物確認の審査が完了すると、建築確認済証が交付されます。
建築物の設計が完了しても、
建築確認済証の交付を受けた後でなければ、
着工することはできません。
また、新築建売住宅や新築分譲マンション、
あるいは新築賃貸マンション・賃貸アパートの広告を
展開できるのも、建築確認済証の交付を受けてからです。
建築確認申請を行うことなく着工すると、
行政から工事の中断や建築物の撤去の命令が
下される可能性があります。
建築確認申請を出してから、
建築確認済証が交付されるまでの期間は、
おおよそ1~2ヶ月が目安です。
建築確認申請の後で建築計画を変更すると、
軽微な変更に該当するケースを除くと、
計画変更の申請手続きが必要です。
着工できるまでの期間がさらにかかり、
コストもかかる点に注意しましょう。
建築確認申請の申請者は建築主ですが、
設計事務所や建設会社の建築士が委任を受けて
代行するのが一般的です。
2025年4月からはすべての新築の建築物で
省エネ基準への適合が義務付けられ、建築確認の手続きの中で、
省エネ基準適合性判定も行われています。
建築確認申請の対象
建築確認申請の対象となる建築物は
立地する地域や建築物の規模や用途によって異なります。
2025年4月から建築確認申請の対象となる建築物の
範囲が拡大されました。
【第1号建築物】
(特殊建築物でその用途の床面積200平米超)
◆対象範囲:すべての地域
◆対象の工事
・新築、増築、改築、移転
・大規模の修繕・模様替え
・特殊建築物への用途変更
【第2号建築物】
(特殊建築物以外の階数2以上または延べ面積200平米超の建築物)
◆対象範囲:すべての地域
◆対象の工事
・新築、増築、改築、移転
・大規模の修繕・模様替え
【第3号建築物】
(階数1かつ延べ床面積200平米以下の建築物)
◆対象範囲:都市計画区域、準都市計画区域、準景観区域など
◆対象工事
・新築、増築、改築、移転
ただし、防火地域や準防火地域以外では、
床面積10平米以下の増築・改築・移転は建築確認申請が不要です。
また、大規模な修繕・模様替えに該当するリフォームは、
建築物の主要構造部(壁、柱、床、梁、屋根、階段)の
一種以上について過半以上を改修する場合が該当します。
フルリフォームでも工事内容によっては、
建築確認申請は不要です。
フローリングや壁紙などの内装材、キッチンやトイレ、浴室などの
水回り設備といった目に見える箇所を一新するケースでは、
建築確認申請は必要ありません。
マンションの専有部分のリフォームは通常、
主要構造部には関わらないため、建築確認申請は不要です。
戸建て住宅などで建築確認申請が必要になるのは、
たとえば、階段を架け替えるケースや、
床の構造用部材の根太の改修範囲が床面積の半分を超えるケース、
屋根の葺き替えで野地板や垂木といった下地構造材の改修範囲が
屋根面積の半分を超えるケースなどが、例として挙げられます。
建築確認申請の流れ
建築確認申請以外にも、建築物によっては中間検査が必要であり、
工事の完了後には完了検査が義務付けられています。
建築確認申請から完了検査までの流れをまとめました。
1:建築確認申請
確認申請書や図面などの必要書類を用意し、
自治体、または指定確認検査機関に提出します。
2:建築確認済証の交付
自治体や指定確認検査機関で、申請書類をもとに建築計画が
建築基準法や条例などに適合しているか確認が行われます。
審査が完了すると、建築確認済証が交付されます。
3:工事着工
建築確認済証が交付されると、工事に着工できます。
4:中間検査申請・中間検査・中間検査合格証の交付
(一部の建築物)
中間検査は工事が完了すると見えなくなってしまう、
基礎や柱や梁といった構造部分の施工中の検査です。
中間検査の対象となる建築物は自治体によって違いがあります。
中間検査に合格すると、中間検査合格証が交付されます。
5:完了検査の申請
建築物が完成した後、4日以内に完了検査の申請を行います。
6:完了検査・検査済証の交付
完了検査の申請から7日以内に完了検査を受けます。
完了検査は実際に建てられた建築物を現地で確認し、
図面通りに作られ、建築基準法や条例などに適合しているか
検査が行われます。
完了検査で問題がなければ、検査済証が交付されます。
建築確認申請に必要な書類
建築確認申請にあたって必ず必要になる書類は以下のものです。
自治体や建築物によっては、
このほかにも必要な書類が生じることがあります。
〈建築確認申請に必要な主な書類〉
・確認申請書
・建築計画概要書
・建築工事届
・委任状
・添付図書(案内図、配置図、平面図、立面図など)
確認申請書は、建築主や設計者、工事監理者、施工者、
建築物およびその敷地に関する事項、
建築物の物件概要などを記載する書類です。
建築計画概要書は確認申請書と同様の項目のほか、
案内図や配置図など、建築計画の概略を記載する書類です。
建築計画概要書は自治体に保管され、
周辺住民や建築物の購入検討者など、
誰でも閲覧することができます。
建築工事届には、建築主や工事施工者、工事監理者、
着工や工事完了の予定日、建築物ごとの内容など、
工事に関する内容を記入します。
建築工事届は建築着工統計にも用いられています。
委任状は設計事務所や建設会社の建築士が、
建築主に代わって建築確認申請を行うために必要となります。
建築確認申請にかかる費用
建築確認申請の手数料は自治体や指定検査機関によって
異なります。
自治体よりも指定検査機関の方が手数料が高く、
審査が早い傾向があります。
ここでは例として、東京都に建築確認申請を行った場合の
手数料を記載しました。
ただし、構造計算適合性判定が必要なケースや、
省エネ適合判定が不要で仕様基準などを用いて
判定を行うケースでは、別途追加費用が必要です。
〈東京都の床面積別の建築確認申請の手数料〉
・30平米以内のもの:6,900円
・30平米を超え100平米以内のもの:13,000円
・100平米を超え200平米以内のもの:21,000円
・200平米を超え500平米以内のもの:25,000円
・500平米を超え1,000平米以内のもの:35,000円
・1,000平米を超え2,000平米以内のもの:49,000円
・2,000平米を超え10,000平米以内のもの:146,000円
・10,000平米を超え50,000平米以内のもの:249,000円
・50,000平米を超えるもの:474,000円
終わりに
建築物を利用する人や近隣住民の安全を守るために、
建築確認申請は必要な手続きです。
家を建てるときにも、設計が完了してから
工事に着工できるまでに、
建築確認申請が下りるまでの期間を要しますが、
安全で安心できる住まいづくりのために
欠かせないといえるでしょう。

