工事が始まりました
先日、都内のRC5階建ての現場が始まりまして
試験杭の立会いを行いました。
設計段階にて地盤調査をするのですが、
調査の結果地盤の状態があまり良くないと
いうこともあり、杭基礎を採用して今回の
工事に至っている訳ですが、その杭工事では
最初に試験杭と言われるものを施工します。
試験杭って
試験杭は支持層を確認するための杭で、
最初に打設する杭のことを指します。
ちなみに試験杭は打設後、そのまま建物の
杭に使用します。
杭の設計時に、支持層のおおよその位置は
ボーリングデータと呼ばれる地盤調査報告書
から把握していますが、ボーリング調査する
位置と杭を打設する位置は完全に一致はして
いません。
そこで、最初に打設する杭である試験杭を
打設した際、きちんと杭先端が支持層に到達
していることを確認し、この時の値を管理基準値
として本杭の打設を管理していきます。
工事監理者の立会いで
一般的には、工事監理者や構造設計者が試験杭に
立ち会って材料や施工管理状況、地質や支持地盤
を確認します。
特に支持力の発揮に関係する確認は重要であり、
設計図書と異なる状況があれば、試験杭の
施工結果から今後の施工基準等を指示します
ざっくりとした試験杭のながれですが今回は、
鋼管杭を採用しているので
それに沿って下記に記載をしてみました。
ちなみに、数ある杭の中から鋼管杭を採用して
いるのは色々と理由があるのですが、鋼管杭の
メリットとして狭小地でも施工可能、残土が
発生しない、そしてコスト的にもメリットがある。
といったところです。
墨出し・杭芯の確認
杭を打設する位置の墨出しが図面通りに
なっているか確認します。
杭を打設すると墨や杭芯の目印が消えて
しまうので、逃げの墨を打っておくことも
必要ですが試験杭の当日というよりも前もって
確認する方が多いかと思います。
材料検収
設計図や施工計画書通りの杭が搬入され
ているか確認します。
間違った材料が搬入されることは皆無に
等しいですが、間違いがあってからでは遅い
のできちんと確認します。
杭長、杭径、杭厚、翼系などを目視・実測します。
杭芯セット
事前に確認した墨や目印に杭芯を合わせて
実際に打設していきます。
この時、杭が鉛直になっているかの確認も重要です。
溶接確認
運搬搬入の関係で、杭1本あたり5m前後と
なっており支持層までの深さが長ければ長い
ほど杭1本では足りないので2本以上の杭を
繋げる必要があります。
地中から1m程度飛び出している状態の
1本目の杭の上に2本目を設置し、溶接で繋げます。
溶接に不備があった場合、そこが杭の弱点と
なってしまうため、適切に管理しておく必要があります。
また、開先(繋げた杭同士の隙間)の確認も実施します。
ちなみに今回の杭長は21.5mあり、杭自体は5本繋ぎと
なっているので、この溶接作業が何回かありました。
打止めトルク確認
杭先端が支持層に到達すると、杭に掛かる
抵抗値(トルク値や電流値)が大きくなり、
この時の抵抗値を管理基準値とします。
試験杭後に実際施工していく本杭は管理基準値に
達したら打設完了という管理方法になるため、
管理基準値はとても重要な値となります。
一般的に、鋼管杭ではトルク値で打止め値を決定します。
打止めトルク確認は試験杭ならではの確認項目です。
打ち止め確認
杭施工のオーガー(重機)にて深度は管理しており
地盤調査データと施工深度、施工回転トルクの推移
1回転当たりの貫入量を比較しながら、
総合的に打ち止めの判断を行う事になります。
杭を打設した後、地盤面から杭頭までのレベルを測定
して設計図書通りか確認を行います。
↑地盤面から杭頭までのレベル測定中
おわりに
「砂上の楼閣」という言葉がありますが、
本来、必要な支持力が不足すれば建物の安全に
影響を与えてしまう事があります。
掘ってみなければ分からない地中は、不確定要素
が多いです、なので実際に試験や施工を行った
結果から、地中の状況を判断する必要があります。
工事監理者は建物の安全を守る重要な役割を担っています。
↑この現場の完成予想CG