住宅は年月が経過していくと、
さまざまなメンテナンスが必要です。
しかし、マンションは長期修繕計画にもとづいて
共用部分のメンテナンスが実施されているのに対して、
戸建住宅はメンテナンスの必要性が見落とされてしまいがちです。
そこで、今回は住宅の部位ごとにメンテナンスがいつ必要になるのか、
どの程度の費用がかかるのかを解説し、
戸建住宅の修繕計画について考えていきます。
住宅のメンテナンスが必要な理由
そもそも、なぜ住宅にはメンテナンスが必要なのでしょうか?
「老朽化して、多少傷んでいても住めればよい」
という考えの方もいらっしゃるかもしれません。
住宅の外装や内装、設備などは
経年劣化によって傷んでいくことから、
美観や性能を維持して快適に暮らしていくためには
メンテナンスが必要です。
メンテナンスによって、建物をできるだけ長持ちさせることは、
資産価値を守ることにもつながります。
また、適切な時期にメンテナンスを実施している場合と比較して、
メンテナンスを怠っていると、高額な修繕費用がかかる、
あるいは建物の寿命が短くなるといったリスクもあります。
たとえば、外壁の塗装が劣化して
塗膜が剥がれた状態を放置した場合には、
コケやカビが発生したり、あるいは壁から雨水が侵入して
躯体が腐食したりするといった事態が考えられます。
躯体の補強が必要になると、
大がかりな工事を行わなければなりません。
こうした理由から、戸建て住宅も
修繕計画を立ててメンテナンスを行い、
建物の性能を維持していくことが望ましいのです。
ここからは住宅の部位ごとに、メンテナンスが必要なタイミングや
費用の目安をまとめていきます。
屋根
屋根は素材によって
メンテナンスが必要となるタイミングが異なります。
スレートは築10~15年程度、ガルバリウム鋼板は築20~30年程度で
塗装が必要になります。
屋根の塗装には足場を組む必要があり、
塗装費用は足場代25万~40万円程度を含めて、
85万~120万円程度が目安となります。
外壁のメンテナンスと同時で行うと、
足場代が一度で済むのでトータル費用を抑えられます。
瓦は塗装は不要ですが、状況に応じたメンテナンスが必要です。
一部の瓦が割れた場合には、周辺を含めて交換を行います。
瓦を固定している板金の交換、
屋根の頂部の棟に用いられている漆喰の補修といった
メンテナンスが必要になることもあります。
全体的な屋根リフォームが必要になる時期も、
素材によって異なります。
スレート屋根は築20~30年程度、
ガルバリウム鋼板は築30~40年程度、
瓦は築50~100年程度が目安となります。
全体的な屋根リフォームの費用は、既存の屋根材の上から
新しい防水材と屋根材を施工するカバー工法の場合で
100万~200万円程度が目安です。
屋根材や下地を撤去して張り替える葺き替えは
150万~300万円程度が目安となります。
カバー工法の方が葺き替えよりも安価な費用で済みますが、
屋根材が瓦の場合は選択できません。
屋根材がスレートやガルバリウム鋼板の場合でも、
下地が痛んでいるケース、
あるいは屋根部分の荷重が大きくなると
構造上耐えられないケースなど、
カバー工法が選択できないこともあります。
外壁
昨今の外壁材の主流である窯業サイディングは、
築8~10年程度でつなぎ目のシーリングの打ち替えが必要です。
築10年~15年程度で表面のコーティングが劣化するため、
塗装が必要になります。
金属系サイディングの中でもガルバリウム鋼板は、
築20~30年程度で塗装が必要になり、
シーリングが劣化した際には打ち替えが必要です。
外壁が塗装仕上げの場合は、
塗膜が劣化して再塗装が必要となるタイミングは、
使用する塗料によって違いがあります。
耐用年数はウレタンで8~10 年、
耐久性とコストのバランスがよいシリコンは12~15年が目安です。
耐用年数が長い塗料を使用すると、
1回の工事費用は高くなりますが、
メンテナンスの頻度を減らせます。
外壁の塗装にかかる費用は足場代25万~40万円を含めて、
85万~120万円程度が目安です。
また、サイディングは築25~40年程度で張り替えの必要があり、
190万~290万円程度の費用がかかります。
水回り
キッチンや浴室、洗面台、トイレといった水回りは、
経年劣化によって不具合や故障などが生じるため、
メンテナンスが必要です。
交換費用は設備のグレードによって差があります。
築10~15年程度で給湯器や食洗機、トイレの温水洗浄便座、
キッチンや洗面台の水栓の交換や修理が必要になります。
ガス給湯器の交換費用は15万~30万円程度。
食洗機は部品の交換費用は5万円程度ですが、
本体の交換費用は10万~25万円程度が目安となります。
トイレの温水洗浄便座の交換費用の目安は4万~10万円程度です。
水栓の交換費用は、キッチンは4万~7万円程度、
洗面台は3万~7万円程度ですが、グレードにもよります。
築20年程度でコンロやレンジフード、洗面台の交換が必要です。
ビルトインコンロの交換費用はグレードにもよりますが、
15万円前後が相場となります。
レンジフードの交換費用は、10万~20万円程度。
洗面台の交換費用は10万~25万円程度が目安です。
そして、築30年程度になると、システムキッチンやユニットバス、
便器の交換リフォームが必要な時期となるほか、
給湯器も再度交換が必要になることが考えられます。
システムキッチンの交換費用は100万~200万円程度ですが、
グレードにもよる差が大きくあります。
ユニットバスの交換費用は80万~160万円が目安となります。
内装
内装材も築年数の経過とともに劣化していきます。
築20年以降で壁や天井の壁紙、
築30年以降でフローリングの張り替えが必要になっていきます。
壁紙の張り替え費用は、グレードや広さにもよりますが、
45万~90万円程度が目安です。
フローリングの張り替え費用は
6帖の部屋で10万~18万円程度が目安ですが、
下地が傷んでいる場合には下地の張り替え費用も必要になります。
「家を建てたら終わり」ではなく、
長い間にわたって安全に快適に暮らせる状態を維持するためには、
計画的にメンテナンスを行う必要があります。
そして、適切なメンテナンスの実施が
資産価値を守ることにつながります。
そのためには、家づくりの段階から将来を見越して、
修繕計画についても考えておくことが大切です。