いつまで続く?建築材料問題

ウッドショック 住宅

世界的な流行から2年以上が経過しても、いまだに収束が
見通せないコロナ禍。
さらにロシアによるウクライナ侵攻も、終わりが見えない
状況となっています。そして、数十年ぶりの円安水準。

ウッドショックだけでなく

これらの複合的な要因によって、いわゆるウッドショックによる
影響だけではなく、建設資材や住宅機器が高騰するという事態が起きています。
今回は、建設資材や住宅機器の高騰の現状や要因、
そして今後の住宅価格への影響などについてみていきます。

建設資材や住宅設備も値上げラッシュ

2021年の3月頃から日本の住宅業界では、輸入材の価格の
高騰や品不足による影響に見舞われ、オイルショックになぞられて
「ウッドショック」と騒がれ始めました。
ウッドショックは2021年のうちに収まるという見立てもありました。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻により、ロシア産木材の輸出が
減少したことなどの影響から、2022年に入っても特に集成材や製材の
価格は高止まりしています。
ウッドショック

さらに最近では木材に限らず、その他の建設資材や住宅設備も
欠品が生じたり、値上げラッシュが相次いだりする事態と
なっているのです。
多くのメーカーが理由として挙げているのが原材料費や部品
調達コスト、物流コストの上昇で、業務効率化による生産性の
向上だけではこうしたコストの上昇を吸収できなくなくなったとしています。

具体的な例として

2022年4月から値上げに踏み切ったメーカーだけを見ても、
フローリングや室内建具などを扱う大建工業や朝日ウッドテック、
永大産業のほか、LIXILやリンナイなどが挙げられます。

LIXILでは2022年4月1日受注分から、エクステリア関連は10%程度、
サッシは6~10%程度、トイレは2~5%程度、ユニットバスは4~39%
程度などの値上げを行いました。
さらに、4月の値上げの対象とならなかった商品の一部を対象に、
2022年9月1日から値上げを実施することが発表されています。

リンナイでは2022年4月に給湯器の価格を7~10%値上げするなど、
価格改定を行っています。

また、TOTOでも2022年10月1日受注分から、トイレや洗面器などの
衛生陶器を3~8%程度、ウォシュレットを2~13%、ユニットバスを
6~20%程度、システムキッチンを2~7%程度などの値上げが行われる予定です。

このほかにも既に値上げを行った・予定しているメーカーが複数あるなど、
建設資材や住宅設備は値上げラッシュの波が押し寄せています。

建設資材や住宅設備が高騰する要因とは?

建設資材や住宅設備が高騰したのは、コロナ禍による影響や
ウクライナ侵攻、円安などによる複合的な要因が絡んでいます。

原油価格の高騰によって物流コストは当然ながら上昇しています。
コロナ禍からの景気の回復によるアメリカや中国での需要の拡大
によって、輸送用のコンテナの確保にかかる費用がアップしている
ことも物流コスト上昇の要因の一つです。

日本国内の事情では、働き方改革によって労働基準法の残業時間の
上限規制が2024年4月にドライバーにも適用され、年間960時間に
制限されることが、運賃の値上げにつながっているという見方もあります。

また、そもそも原材料の調達国ベースの価格が変わらなくても、
円安が進むこと輸入価格は高騰します。

鉄やアルミといった金属類も

さらに、ウッドショック以外にも、鉄やアルミニウム、銅の価格が
高騰する「アイアンショック」と呼ばれる事態も起きていますが、
これらの要因以外の個別の事情が影響しています。

アルミニウムの価格高騰の要因の一つは、2021年9月に原材料の
鉱石やボーキサイトの主要産出国のギニアで政変が起きたことによって、
供給が制約されたことです。
また、地球環境問題による脱プラスチック化の流れから、飲料の容器を
プラスチックからアルミニウム缶に変更する動きがあることも、
アルミニウム価格の高騰につながっています。

また、銅の価格高騰の背景として、コロナ禍の影響から鉱山が閉鎖
したことによる供給量の減少のほか、ガソリン車よりも多くの銅を
用いるEV車の需要の拡大が挙げられます。

アイアンショックはウクライナ侵攻による影響も危惧され、
ロシアが多くのシェアを持つ貴金属のパラジウムは半導体の材料の一つです。
ロシアからのパラジウムの供給が制限されると、今後、エアコンなどの
空調機器や給湯器など、電気制御が行われる機器の製造に必要な半導体が
足りなくなることが危惧されています。
現状でもコロナ禍の影響から、給湯器などの品不足が続く中、
先行きが見えない事態といえます。

↑エアコンもかなり品薄状態が続く

住宅価格への影響も

建設資材や住宅設備の高騰は当然のことながら住宅価格に反映するため、
住宅価格の上昇は避けられないものとなっています。

ただし、住宅の建設には多大な費用がかかることから、住宅価格への
影響はまだそこまで大きなものではなく、現状では建物本体工事費の
約1~2%、水回り設備の部分で30万円程度のアップが見込まれています。

また、大手の住宅メーカーなどでは、1年分をまとめて契約していると
いった事情もあり、現状では必ずしも住宅価格に反映しているとはいえません。
現状では価格が転嫁されている建設会社と従来の価格水準を維持している
建設会社に分かれています。

しかし、現状を維持している会社でも、遅かれ早かれ価格の転嫁が
行われていくことが見込まれています。

さらに、住宅価格の高騰を招く要因は建設資材や住宅設備の値上げ
だけではなく、人件費の高騰も影響します。
建設業界では少子高齢化による人手不足が深刻化する中、技能実習生
などの外国人が労働力としても重宝されていました。

しかし、コロナ禍において外国人技能実習生の入国がままならない
事態が起こり、人手不足にさらに拍車がかかりました。
そのため、建設業界では、人件費が高騰しているのです。

実際に国土交通省の「建築工事費デフレーター」をみてみると、
2022年4月の建設総合の数値は117.3でした。
前月の117.8からはやや下がっているものの、2020年4月は109.3で
あったことから、建設コストが高止まりしている状況がうかがえます。

参考:国土交通省|建設工事費デフレータhttps://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/sosei_jouhouka_tk4_000112.html

いつ住宅価格の高騰は一段落する?

最近では主要都市を中心に土地の価格も上昇傾向にあり、
そこに追い打ちをかけるように、建設資材や住宅設備、さらに人件費も
値上がりしたことから、工事費用もアップする事態となっています。

そのため、「いつ住宅価格の高騰が落ち着いて下がるのか?」、
住宅購入を控えて値下がりを待つ動きもみられます。
しかし、住宅価格が下がるときは来るのか、現状維持となるのか、
あるいは更なる高騰が待っているのか、今後のことは不透明です。

価格が下がるのを待って家を買おうと思っていても、下がるときが
来ない可能性もあります。
そこで、ライフステージでマイホームを必要とするタイミングで、無理のない
範囲内の予算に収まる住宅を手に入れるという選択肢も検討してみましょう。

↑給湯器等は早めの手配をしておくべき

おわりに

建設資材や住宅設備の高騰は複雑な要因が絡みあっていることもあり、
先行きは不透明です。値下がりを待って購入する難しさがあります。

しかし、結婚や子どもの誕生、入学、あるいは転勤、親の介護などのため、
マイホームを手に入れたいタイミングがあるのではないでしょうか。

建築家との家づくりなら、建設資材や住宅設備が高騰している現状を
踏まえたうえで、お金を使うところと抑えるところのメリハリをつけるなど、
予算内で最善の家づくりを提案が出来ると思います。

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