耐震基準って?
マイホームとして中古物件を購入するときなどに、
「旧耐震基準」「新耐震基準」という言葉を耳にした
ことはありませんか?
日本では建築基準法による耐震基準が、今から41年前の
1981年6月1日を境に大きく変わっています。
基準が変わって40年以上
1981年からは40年以上が経過していますが、特に中古
マンションでは築40年を超える物件の取引もよく行われています。
今回は旧耐震基準と新耐震基準の違いを押さえたうえで、
旧耐震基準の中古マンションを購入を検討しているときに
確認したい点や注意点にも触れてみたいと思います。
旧耐震と新耐震基準とは
耐震基準とは、一定の強さまでの地震によって建物が
倒壊・崩壊しない性能を有するために、建築基準法に
よって定められた基準です。建築基準法は1950年から
施行され、耐震基準は何度か見直されていますが、
大きな改正があったのは1981年6月1日です。
1950年から1981年5月31日まで適用されていた耐震基準は
「旧耐震基準」として、1981年6月1日から適用されている
耐震基準は「新耐震基準」と呼ばれています。
↑2016年に発生した熊本地震(熊本城)
旧耐震と新耐震基準の違い
旧耐震基準と新耐震基準では、建物が地震によって
倒壊・崩壊しない震度の基準に違いがあります。
旧耐震基準では、「震度5強程度中規模の地震で、家屋が
倒壊・崩壊しない」ことが基準とされていました。
旧耐震基準では、震度6以上の地震が発生することが
想定されていなかったのです。
しかし、1978年に発生した宮城県沖地震は震度5でしたが、
倒壊した建物が多く、死者も出るなど想定を超える甚大な
被害がもたらされました。
旧耐震基準では不十分とされたことから、耐震基準の改正が
行われました。
また、新耐震基準では建物の倒壊・崩壊を防ぐだけではなく、
人命を守ることも重視されるようになっています。
こうして改正された新耐震基準は、「震度5強程度の中規模の
地震では、家屋がほとんど損傷しない」「震度6強から震度
7程度の大規模の地震で、家屋が倒壊・崩壊しない。多少の
損傷は許容する」というものとなりました。
↑熊本地震発生後の街並み
↑熊本地震発生後の街並み
新旧耐震基準の見分け方等
中古物件の購入を検討する際に、旧耐震基準で
建てられた建物か、新耐震基準に基づいていることを
判断するうえで、分かれ目となる1981年6月1日が
何の日付かという点に注意が必要です。
旧耐震基準から新耐震基準に切り替わる1981年6月1日は、
竣工日ではなく、建築確認申請が下りた日になります。
建築確認とは、建物を新築するときなどに、自治体や
民間の指定確認検査機関によって、設計などが建築基準法に
適合しているか、確認が行われる手続きです。建築確認が
下りると、工事に着工することができます。
つまり、新耐震基準が適用された1981年6月1日というのは
建築確認が下りた日による基準で、この後に工事が着工する
ことから、竣工日とは大きく離れていることがあります。
特にマンションなどのRC造の建物は工事期間が長く、
建築確認申請が下りて、すぐに工事がスタートするとは
限りません。
たとえば、10階建てのマンションでは1年強の工期がかかります。
1982年に竣工したマンションでも、旧耐震基準に
基づいている可能性があるのです。
そこで確認申請が下りた日を確認するには、建築確認済証を
チェックするという方法があります。
中古物件の購入を検討する際には一般的に開示されている
情報ではないため、不動産会社を通じて、売主に建築確認済証の
「確認年月日」を確認させてもらうようにしましょう。
売主が建築確認通知書を紛失している場合は、再交付を
受けることはできません。
そこで、行政機関の窓口で確認台帳記載事項証明の発行を
依頼するという方法もあります。
あるいは、建築計画概要書の閲覧申請を行い、建築確認済証が
受理された年月日を確認することも可能です。
ただし、築年数がかなり経過した物件など、行政機関に記録が
残っていないケースもみられます。
旧耐震の物件購入での確認点
最近では、都心部を中心に新築マンションの価格が高騰
していることもあり、中古マンションを購入して
リノベーションすることも、マイホームの選択肢となっています。
中にはヴィンテージマンションと呼ばれ、築年数を重ねても
人気を博している物件もあります。
中古マンションを購入する際には、旧耐震基準の時代に
建てられた物件の場合は、耐震性能に関して確認しておくと
安心です。実際には旧耐震基準の時代に建てられた中古
マンションは、すべて耐震性能が劣るわけではなく、
耐震診断を行った結果、新耐震基準を満たしていることが
判明した物件もあります。
また、耐震基準適合証明書を取得した実績のある中古
マンションなら、耐震基準を満たしています。
耐震基準適合証明書とは、建築基準法による耐震基準を
満たしていることを証明する書類です。
耐震基準適合証明書の取得にあたっては、建築士事務所に
所属する一級建築士のほか、指定確認検査機関や登録住宅
性能評価機関、住宅瑕疵担保責任保険法人が依頼先となります。
一級建築士による現地調査や耐震診断が実施された後、耐震
基準適合証明書が発行されます。
↑旧耐震マンションのイメージ
旧耐震の物件購入時の注意点
旧耐震基準の中古マンションは、立地条件がよい割に価格が
安いといったメリットがあります。
しかし、旧耐震基準の中古マンションで耐震診断を受けて
いない物件は、必ずしも耐震性が劣るとは限りませんが
不安は残ります。
実際に大地震が起こると、大きな被害を受けた建物の多くは
旧耐震基準のものです。
また、旧耐震基準の中古マンションは、住宅ローンや火災保険、
税金などの面で不利という点にも注意が必要です。
まず、住宅ローンの面では、旧耐震基準の物件は評価額を
抑えられる傾向があります。
万一、地震で倒壊してしまうとローンの返済が難しくなる
ことや、返済が滞った場合に売却しても、売却によって回収
できる額が低いことが見込まれるためです。
そのため、全額を住宅ローンでまかなって購入するのは難しく、
ある程度、頭金を用意しなければ購入できないことが多いです。
また、フラット35の利用にあたっては、1981年5月31日以前の
日が建築確認日の物件は、耐震評価基準に適合していることが
求められています。耐震基準適合証明書を取得している物件など
一部の物件を除くと、フラット35の利用は難しいといえます。
さらに、中古マンションで住宅ローンを利用するには、
築25年を超えた物件は耐震基準適合証明書を取得するなど、
新耐震基準を満たしていることの証明が必要です。
そのため、旧耐震基準の物件の購入では住宅ローンの融資を
受けられても、住宅ローン控除を利用できないケースが
少なくありません。
このほかには、火災保険や地震保険の保険料は旧耐震基準の
物件は割高になる傾向です。
不動産取得税や所有権の移転登記に関わる登録免許税の
優遇措置も、新耐震基準を満たしていることが要件となっています。
旧耐震基準の中古マンションを購入する際には、こうした
費用面などのデメリットがあることも踏まえて検討しましょう。
おわりに
中古物件の中でも、旧耐震基準で耐震診断を受けていない
物件の購入には、安全面での不安があります。
旧耐震基準の物件は価格が安い傾向はありますが、安全面や
金銭面のデメリットも踏まえて検討することが大切です。
また、旧耐震基準の物件で耐震診断を行いたい場合や
耐震基準適合証明書を取得したい場合には、一級建築士に
相談をしてみたら良いかと思います。