マイホームを建てるための土地を探していると、
「埋蔵文化財包蔵地」という土地を見つけることがあるかもしれません。
しかし、多くの方が埋蔵文化財包蔵地という言葉は聞き馴染みが
ないのではなく、家を建てるときにどんな影響があるのか想像しにくい
のではないでしょうか。
そこで今回は、埋蔵文化財包蔵地とはどのような土地なのか、
家などを建てる場合に必要な手続きやデメリットなどについて解説していきます。
埋蔵文化財包蔵地とは
埋蔵文化財包蔵地とは、地中に文化財保護法で定められた
埋蔵文化財が埋められていることが認識されている土地を指します。
埋蔵文化財には、古代から近現代に至るまでの石器や土器などの遺物と、
貝塚や古墳、住居跡、城跡、塚などの遺構があります。
文化庁によると、埋蔵文化財包蔵地は全国で約46万カ所あります。
また、後述する発掘調査は、毎年9,000件実施されています。
参照:文化庁|埋蔵文化財
埋蔵文化財包蔵地に該当するか調べる方法
所有している土地や購入を検討している土地が
埋蔵文化財包蔵地に該当しているか調べるには、市町村の
教育委員会が作成する遺跡地図や遺跡台帳を確認する方法があります。
自治体によっては、WEBサイトで遺跡地図を公開しています。
たとえば、東京都では「東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス」に
よる情報公開が行われています。
ただし、遺跡地図や遺跡台帳に載っていない埋蔵文化財包蔵地が
存在することもある点に注意が必要です。
遺跡地図や遺跡台帳には載っていなくても、埋蔵文化財包蔵地であれば、
建設工事を行うときなどには後述する届出などを行う必要があります。
多くの自治体では、窓口やFAXによる問い合わせで、
埋蔵文化財包蔵地に該当するかどうか、回答を行っています。
自治体の窓口は文化課や教育委員会生涯学習課など、名称は様々です。
とはいえ、埋蔵文化財包蔵地とは知らずに土地を購入して
しまうリスクは低いです。
土地を購入するときには、売買契約を締結する前に宅地建物取引士
による重要事項説明が書面を提示して行われます。
埋蔵文化財包蔵地であれば、通常、重要事項説明書の法令上の
制限の項目に記載があり、宅地建物取引士からも説明があります。
↑都の遺跡地図情報のイメージ画像
埋蔵文化財包蔵地に家を建てるために必要な届出と流れ
埋蔵文化財包蔵地に住宅建設などの工事を行う際には、
建築確認申請などの手続きのほかにも、行政への手続きが必要になります。
工事着工の60日前までに自治体へ「埋蔵文化財発掘の届出」のを
提出する必要があります。
自治体では「埋蔵文化財発掘の届出」を受けると、
埋蔵文化財担当者が現地を確認し、必要に応じて試掘が実施されます。
そして、現地確認や試掘の調査結果、工事内容などから、
「慎重工事」「工事立会」「発掘調査」などの通知が行われます。
(自治体によってはこの3つ以外の通知が行われるケースがあります。)
↑試掘調査の結果、江戸時代の遺構が出てきた。
<自治体からの主な通知>
・慎重工事
試掘などの結果、遺物や遺構がほとんど確認されないケース。
工事の影響がほとんどないため、予定通りに慎重に工事を進められます。
・工事立会
工事内容が遺跡ほとんど影響を与えないケースや発掘調査の
安全が確保できないケース、工事を行う土地が狭小のケース、
発掘調査の実施が難しいケースなど。工事に着手することはできますが、
自治体の担当職員が立ち会いを行います。
・発掘調査
工事が埋蔵文化財に影響を及ぼすと判断されたケース。
原則として、発掘調査が実施されます。
たとえば、軟弱地盤の上に家を建てるケースや3階建て以上の
建物を建てるケースなど地盤改良が必要な場合や、
鉄筋コンクリート造で杭基礎を用いる場合などは、
埋蔵文化財が埋まっている可能性がある深い地層まで掘るため、
試掘が実施される可能性が高くなります。
発掘調査は、確認調査と本調査の2段階で行われます。
確認調査は本調査の範囲や基礎資料の作成を目的に実施するもので、
対象の土地の10%程度を上限に実施します。
本調査は確認調査の結果をもとに決定した範囲を対象として、
記録保存を目的に遺物や遺構の精査が行われます。
発掘作業や整理作業が終了すると、確認調査や本調査の
報告書が作成され、通常は工事に着工できます。
ただし、重要な遺跡などが見つかった場合は現状保存となり、
工事にとりかかれないことがあります。
また、慎重工事の通知を受けて工事に着工した後、
遺物や遺跡が出てきた場合には、行政などへの連絡が必要です。
慎重工事や工事立会で工事中に遺物や遺構が見つかった場合は、
再度、行政による協議が行われ、発掘調査が実施されることもあります。
↑発掘調査の風景
埋蔵文化財包蔵地のデメリット
埋蔵文化財包蔵地に家などを建てようとすると、
工事着工までに時間がかかることがデメリットです。
あらかじめ、工事着工の60日前までに届出を提出し、
試掘でほとんど遺物や遺跡が発掘されなければ、
影響を最小限に抑えられます。
一方で、試掘で遺物や遺跡が見つかった場合に発掘調査が
実地されると、少なくとも2ヵ月や3ヵ月、長ければ1年にも
わたる期間がかかるため、工事の着工が大幅に遅れます。
また、軟弱地盤の土地など地盤改良を必要とするケースでは、
試掘の結果、遺物や遺構が発見されると、地盤改良が行えず、
建物の位置の変更や縮小などの計画変更が必要となる可能性があります。
さらに事業者がマンションやビルを建てるケースなど、
事業目的の工事で発掘調査が必要になると、事業者が
発掘費用を負担しなければならない点も、大きなデメリットです。
発掘調査費用のほか、整理作業費用や報告書の作成費用も事業者の負担です。
個人が住宅を建てる場合には公費負担となるため、発掘費用の負担はありません。
こうした理由から、埋蔵文化財包蔵地は土地が売却しにくく、
売却価格が下がってしまいやすいこともデメリットに挙げられます。
家を建てるために購入を検討している土地が埋蔵文化財包蔵地で、
周辺相場よりも安価だからと安易に購入を決めるのはリスクがあります。
おわりに
埋蔵文化財包蔵地に家を建てると、工期が遅れるリスク、
建物の形状や構造などで希望通りの家を建てられないリスク、
さらに将来、売却するときに不利になるリスクがある点を踏まえておきましょう。