テレビなどで、地盤が弱いことが原因で傾いてしまった家を
見たことはありませんか?
土地の地盤の強度によっては、建物を建てる前に補強が必要です。
杭工事は地盤の補強方法の一つであり、
戸建て住宅でも行われることがあります。
今回は、杭打ち工事とはどんなものなのか、
杭工事の必要性を判断する地盤調査について押さえたうえで、
杭や工法の種類などについても解説していきます。
杭工事とは
杭工事とは、軟弱地盤で建物の荷重を支えられるようにするため、
地中の強固な地盤まで杭を打ち込む工事のことです。
軟弱地盤とは、柔らかい粘土や密度が低いゆるい砂で構成された、
強度の弱い地盤を指します。
軟弱地盤に建物を建てると、地盤が荷重に耐えられず、
建物が傾いて沈んでいく不動沈下が起きるリスクがあります。
あるいは地震が発生した際には、
液状化現象の発生が危惧されます。
日本は軟弱地盤が多く、特にかつて川や湖、池であった場所は
軟弱地盤の可能性があります。
地盤の補強方法は杭工事と、表層改良工法や柱状改良工法といった
地盤改良工事に分けられます。
杭工事は地中の強固な地盤まで杭を打ち建物を支えるのに対して、
地盤改良工事は現地の地盤の土とセメント系固化材を混ぜて
地盤を補強するという違いがあります。
軟弱地盤に戸建て住宅を建てる場合には
地盤改良工事が採用されることが多いですが、
地盤の状態や建物の規模によっては杭工事が選択されます。
杭工事の必要性は地盤調査で判断
現在では、建築基準法によって
実質的に地盤調査が義務付けられています。
杭工事や地盤改良工事の必要性の有無は、
地盤調査の結果によって判断します。
地盤調査によって杭工事や地盤改良工事が必要と判断されると、
建設コストに影響することから、土地の売買契約を締結した後、
なるべく早いタイミングで地盤調査を実施するのが望ましいです。
地盤調査の方法には、
スクリューウエイト貫入試験やボーリング調査(標準貫入試験)、
オートマチックラムサウンディング試験といった種類があります。
スクリューウエイト貫入試験は、
以前はスウェーデン式サウンディング試験と
呼ばれていた調査方法です。
ロッドと呼ばれる鉄の棒の先端にスクリューポイントを取り付け、
重りの重さを変えて垂直に突入し、
沈む込みの度合いなどを観察します。
スクリューウエイト貫入試験はコストが安く、
主に戸建住宅で用いられています。

↑スクリューウエイト貫入試験
ボーリング調査(標準貫入試験)は掘削した穴から、
63.5kgのハンマーを高さ75㎝から自由落下させてサンプラーを打撃し、
30cm貫入させるのに必要な打撃回数を1mごとに調査する方法です。
ボーリング調査(標準貫入試験)実施する際には、
同時に土質試験に使用するサンプルを採取するのが一般的です。
ボーリング調査(標準貫入試験)は期間やコストを要することもあり、
主に中規模から大規模の建物に用いられています。
オートマチックラムサウンディング試験は、
63.5kgのハンマーを高さ50㎝から自由落下させて、
ロッドの先端のコーンを30cm貫入させるのに
必要な打撃回数を調査する方法です。
オートマチックラムサウンディング試験は
ボーリング調査(標準貫入試験)よりも
期間やコストを抑えられることから、
主に戸建住宅で用いられています。
ボーリング調査(標準貫入試験)による
地耐力(地盤の強さ)はN値で示され、
スクリューウエイト貫入試験や
オートマチックラムサウンディング試験の結果は
N値に換算します。
オートマチックラムサウンディング試験は、
ボーリング調査(標準貫入試験)のN値との相関関係が
高いとされています。
N値が基準以下で軟弱地盤と判断されたケースのほか、
周辺が盛り土で作られているケースなどでは、
地盤を補強するために杭工事、または地盤改良工事を行います。
戸建て住宅では、強固な地盤が深い位置にあるなど、
地盤改良工事では対応できない場合に杭工事が行われます。

↑標準貫入試験

↑標準貫入試験の結果で出てくる柱状図
既成杭と場所打ち杭に大別
杭工事に用いる杭によって、
既成杭と場所打ち杭の2種類の工法に大別できます。
既成杭は工場で作られた鋼管杭などを指します。
既成杭は品質が安定している、
工期が短いといったメリットがありますが、
現場に運搬することから長さに制限があります。
場所打ち杭は、
現場でコンクリートを流し込んで造成される杭です。
場所打ち杭は現場に合わせた柔軟なサイズでの造成が可能で、
支持力が高いことがメリットです。
ただし、地盤を掘削して、鉄筋製のかごを建て込んで
コンクリートを打設するといった工程が生じるため、
既成杭よりも工期やコストがかかる点がデメリットといえます。
既成杭工法の種類
工場で製作された鋼管杭を打ち込む既成杭工法には、
主に打込み杭工法、埋込み杭工法、回転杭工法
という種類があります。
打込み杭工法は、
重機を使って地中の決められた深さまで杭を打ち込む方法です。
打込み杭工法は支持力が高く、残土や汚水が発生しない
というメリットがあります。
ただし、杭の打撃による振動や騒音が発生することから、
市街地での施工には不向きです。
埋込み杭工法は地盤を掘削した後、杭を埋め込む方法で、
杭の固定にはセメントミルクを用います。
埋込み杭工法は打込み杭工法よりも騒音や振動が少なく、
周囲の環境に配慮しやすい点がメリットです。
一方で掘削によって残土が発生するほか、地盤がゆるむため
支持力は打込み杭工法よりも劣るといったデメリットがあります。
回転杭工法は全回転圧入機を用いて、
先端に羽根を取り付けた鋼管杭を
回転させて挿入させていく方法です。
騒音や振動がほとんどなく、
残土も発生しないというメリットがあります。
ただし、地盤に固い石などの異物が多い場合には、
回転羽が破損してしまうことが懸念されます。

↑鋼管杭の施工イメージ
場所打ち杭工法の種類
現場で地盤を掘削してコンクリートを流し込んで杭を造成する、
場所打ち杭工法の代表的な工法として、
オールケーシング工法、リバース工法、
アースドリル工法が挙げられます。
オールケーシング工法は、
ケーシングチューブという筒状の機械を回転させて挿入し、
ハンマーグラブで内部の土砂を掘削して排土します。
そして、できた穴に鉄筋かごを建て込んで
コンクリートを打ち込んだ後、
ケーシングチューブを引き抜く施工方法です。
オールケーシング工法は穴の内壁が崩れにくい
というメリットがあり、斜めに打ち込む斜杭にも対応できます。
リバース工法はパイプを建込んだ後、
穴の中を水で満たして水圧によって内壁を保護しながら、
回転ビットを用いて掘削した後、
鉄筋かごを建込んでコンクリートを打ち込む施工方法です。
掘削中は掘削土を含む泥水を組み上げて排出し、
泥水と土砂に分離してから、
泥水を再び穴に戻して循環させています。
リバース工法は、
直径や長さが大きい杭の施工にも対応できるのが特徴です。
アースドリル工法はアースドリル機を使って、
先端に刃の付いたドリリングバケットを回転させて掘削しながら、
バスケット内部に溜まる土砂を地上に排出した後、
鉄筋かごを建て込んでコンクリートを打ち込む施工方法です。
穴の内壁は、表層部はケーシングを用いて保護し、
深い部分には安定液を注入します。
アースドリル工法はコストを抑えられ、
スピーディに施工できることから、広く用いられています。


↑場所打ち杭(アースドリル)のイメージ
終わりに
地盤調査の結果によっては、
杭工事は不動沈下を防いで、安全で安心して利用できる建物を
建てるために必要不可欠な工事です。
注文住宅の予算を建てる際には、
杭工事など地盤補強の費用も見込んでおきましょう。

