ベネッセハウスへ
前編の「ANDO MUSEUM」に続く後編の今回は、
島を代表する名建築であり、今回の旅のハイライトでもある
「ベネッセハウス」での滞在記をお届けします。
建築家・安藤忠雄氏の設計により、
「自然・建築・アートの共生」をテーマに建てられたこの施設。
今回は、美術館の中に泊まる「ミュージアム」と、
そこから専用のモノレールで登った先にある宿泊者だけの秘密の空間
「オーバル」に宿泊してきました。
海と光が建築を突き抜ける「ミュージアム」
まずは、1992年に開館した「ベネッセハウス ミュージアム」へ。
ここは、美術館とホテルが文字通り一体になった、世界でも珍しい建物です。
一歩足を踏み入れると、地下から地上へとダイナミックに貫く吹き抜けや、
計算し尽くされた角度で差し込む強烈な自然光のコントラストに圧倒されます。
大きなガラス窓の向こうには瀬戸内海の穏やかな海が広がり、
館内の現代アートと外の自然が見事なバランスで調和しています。
さらに素晴らしいのが、宿泊者だけの特権である「夜の美術館」です。
閉館後、誰もいなくなった静寂の空間を、自分の足音だけを響かせながら歩く。
昼間とは全く異なる表情を見せる夜のアートと対峙する時間は、
まさに鳥肌が立つほど贅沢な体験でした。

時を経て、自然と同化していくコンクリートの美しさ
ここで、私にとって非常に感慨深い気づきがありました。
実は私は、オーバルがオープンした直後の
1996年頃にもこの場所を訪れたことがあります。
当時はまだコンクリートが真新しく、
建築そのものの力強い存在感が際立っていました。
しかし約30年の歳月が流れた今、
ミュージアムもオーバルも、建物の表面が豊かな植物や蔦(つた)に覆われ、
まるで最初からそこにあったかのように瀬戸内の自然と同化しています。
建築は完成した瞬間がゴールではなく、
時間をかけて周囲の自然と溶け合っていくものなのだと、
深く感動させられました。

空と水、そして職人技が織りなす「オーバル」の真髄
ミュージアムを堪能したあとは、専用の小さなモノレールに揺られて丘の上へと登り、
今回宿泊する「オーバル(Oval)」へ。
「オーバル」の名前の通り、建物の中心には巨大な
「楕円形の水盤(池)」が配置されています。
見上げれば丸く切り取られた大きな空。
風が吹けば水面が揺らめき、時間の経過とともに
空の色が水盤に映り込んでいく様子は、
いつまでも見飽きることがありません。
そして、この空間の質感を決定づけているのが、
贅沢にあしらわれた壁面の「ベネチアンスタッコ(イタリアの伝統的な
職人技による大理石を含んだ漆喰仕上げ)」です。

なめらかで独特の光沢を持つ壁面が、
差し込む光や水面の揺らぎを優しく受け止め、
空間全体に深い陰影と圧倒的な上質さを与えています。
部屋に入れば、今度は壁一面の大きなガラス窓から、
遮るもののない瀬戸内海の絶景が目の前に広がります。
中央の水盤が静かにたたえる「内側の水」と、
客室から見渡す「外側の雄大な海」。
この2つの水を安藤建築が鮮やかに繋ぎ、
水音だけが静かに響く空間で過ごす夜と朝は、
まさに五感が研ぎ澄まされるようでした。

まとめ:自然と建築が溶け合う、直島だけの特別な体験
久しぶりに訪れたベネッセハウス。
ただ綺麗な建物を鑑賞するだけでなく、
「自然の美しさ」「アートの刺激」「建築の心地よさ」の
すべてを体感できる場所でした。
時の流れとともに自然の一部になっていく建築のロマンと、
そこが生み出す圧倒的な豊かさを、
改めて全身で感じた特別な滞在となりました。
【ベネッセハウス ミュージアム / オーバル インフォメーション】
住所: 香川県香川郡直島町琴弾地
開館時間(ミュージアム): 8:00〜21:00(最終入館20:00)
年中無休(※メンテナンス休館あり)
お問い合わせ: 087-892-3223(ベネッセハウス)

