家相は気にすべきか

住宅

家相を気にする?

「家相なんて迷信では?」「家相を気にして家を建てたら、
かえって住み心地の悪い家になってしまうのでは?」といった
考え方をする人がいる一方で、「家相が悪いと、災いが起きないか怖い」と
住宅設計を行う際に家相を気にされる施主もいます。

住宅設計では、施主の要望や敷地の条件、あるいは建築基準法や
関連法令といったクリアしなければならない条件がいくつもあります。
さらに家相を踏まえて設計する場合には、方角と間取りの関係性も
優先度の高い条件となるため、設計のハードルが高くなります。
家相はどの程度気にするべきものなのでしょうか。

今回は家相とは何か、考え方の基本を押さえたうえで、住宅設計への
取り入れ方について考えていきます。

そもそも家相とは?

家相とは、家の方角や間取りから「吉相」「凶相」を
判断する考え方をいいます。
平たくいえば、運気の上がる家か、それとも運気の下がる
家かを判断することです。

家相は、もともとは古代中国から入ってきましたが、
長い歴史の中で日本の風土や風習、神仏習合の考え方などに
合わせて独自に発展してきました。
家相にはいくつかの流派があり、流派によって考え方に違いがあります。

また、家相と混同されやすいものに風水が挙げられます。
風水も中国から伝わってきた環境哲学で、気の流れを重視する
という特徴があり、土地や気候といった自然エネルギーを活用して
運気を上げるという考え方にもとづいています。

風水には多くの流派がありますが、伝統的な風水は
2つの分野に分けられます。

1つめは陽宅風水で、都市や土地、建築物、住宅を見る風水です。
2つめは陰宅風水という、亡くなった人のためのお墓を見る
風水があります。

風水は住宅に限らず、衣食住、さらには行動の運も切り開いていく
という考えもあるなど、家相よりも幅広い分野を扱うというのも異なる点です。

家相は中国の風水がもとになってはいますが、宗教や風土の
違いから現代では別のものになっています。

↑香港の風水にて建物中央に穴があいている建物

家相と方位盤の見方の基本

実際に家相を見るには、方位盤と住宅の間取り図(平面図)の
用意が必要です。
方位盤には、家相を見るための家相方位盤というものもあります。

家相方位盤にはいくつも種類がありますが、基本と
されているのは二十四山方位盤です。

家相で用いる方位には「北・北東・東・東南・南・南西・西・北西」の
八方位のほか、「子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥」の
十二支方位、「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」の
十干方位があります。

二十四山方位盤では八方位や十干方位などをもとに、15度ずつで
区切った24方位が示されています。

家相を見るときには、間取り図の家の中心に方位盤を置きます。
複雑な形状をしているケースなど、家の中心がわからない場合には、
間取り図の四隅を対角線で結んで家の中心を求めます。

ただし、住宅が複雑な形状の場合にはどこを家の中心とするかは
様々な考え方があり、それによって家相の判断が異なってしまう
という点に注意が必要です。

一般的な家相の考え方を紹介していくと、
「鬼門・裏鬼門の方角に三備を設けず」という言葉がよく知られています。
これは「鬼門」や「裏鬼門」にあたる方角に、
「三備=玄関・台所・トイレ(浴室)」を設けると運気が下がるので
避けた方がよいという考え方です。

「鬼門」や「裏鬼門」は不吉とされる方角です。
玄関は良い運気も悪い運気も呼び込む運気の入り口であり、
台所は火気を使う場所、トイレや浴室は穢れを流す場所であるため、
「鬼門」や「裏鬼門」には設けない方がよいとされています。

家の中心から見て、「鬼門」は八方位では北東、十二支方位では
丑寅、「裏鬼門」は八方位では南西、十二支方位では申未の方角にあたります。

反対に「鬼門」や「裏鬼門」に設けても問題ないとされるのは、
寝室や子供部屋、書斎などの居室です。

また、「正中線」と「四隅線」は神様が通る道であり、
強い気が溜るとされます。
「正中線」は家の中心から南北に引いた線、「四隅線」は
東西に引いた線です。
あるいは、「正中線」は南北と東西に引いた2つの線、
「四隅線」は北東と南西を結ぶ線と北西と東南を結ぶ線と
されることもあります。
「正中線」や「四隅線」には穢れを流すトイレや浴室、
運気の出入口である玄関や窓を避けた方がよいとされています。

家相方位盤を用いると、「鬼門」や「裏鬼門」、
「正中線」や「四隅線」などが書かれているため、間取り図の
家の中心に合わせて置くだけで、どの方角が該当するか確認
することができます。

一般的な家相の見方を紹介しましたが、家相には流派があるため、
流派によっては異なる可能性があります。

↑家相方位盤のイメージ

家相に合理性がある理由

家相は基本的には科学的根拠にもとづいたものではなく、
迷信と考えられるものではあります。

しかし、昔の建築技術や生活様式のもとでは、合理性がある
考え方ではありました。

たとえば、「鬼門」である北東は日当たりが悪く、湿気が
たまりやすいため、台所やトイレを設置すると、湿気による
カビの繁殖や冬場は水の凍結などの問題が起こりやすいといえます。

また、「裏鬼門」の南西に台所を設けると西日が当たりやすい
ことから、夏場は食べ物が腐りやすく、食材の保管には
向いていないと考えられます。

家相は建築技術やインフラが発達していない時代では、
安全に快適に暮らしていくための暮らしの知恵として
生み出されたものともいえるでしょう。

現在の建築技術なら工夫次第で快適な家に

「鬼門・裏鬼門の方角に三備を設けず」に従うなど、
実際に家相を取り入れて間取りを考えていこうとすると、
住みにくい家になってしまうことがあります。

敷地条件を踏まえると、特に狭小住宅では家相を考慮して
間取りを考えるのは、ハードルが高くなります。

たとえば、トイレや浴室、玄関は「鬼門」「裏鬼門」
「正中線」「四隅線」のいずれも避けようとすると、
設置できる場所にかなりの制約があるためです。

南側にリビングを設けた場合に、トイレや浴室などの
水回りを北側に設けようとすると、「鬼門」「正中線」
「四隅線」のすべてを避けるのは、敷地条件にもよりますが
難しいものがあります。

また、家相には流派があるため、どの考え方に従っていくか
というのも難しいところです。

たとえば、「鬼門」や「裏鬼門」の範囲は北東と南西を結ぶ
鬼門線から30度の範囲とする考え方もあれば、
45度や60度の範囲とする考え方もあります。

さらに家相は、昔の建築技術では合理性があった部分もありますが、
現代では建築技術やインフラの整備などによって、特段の合理性が
感じられなくなっています。

現代の住宅は断熱材の施工によって外部の気温の変化を受けにくく、
エアコンで室内が快適な温度に保たれ、キッチンには冷蔵庫があり、
浴室は換気扇が設けられ、トイレは水洗トイレが設置されているほか、
電気やガス、水道などのインフラも整備されているためです。

おわりに

住宅を設計するにあたって建築基準法への適合はもとより、
快適に過ごせる住まいにするためには、家事動線や収納など
優先するべき点は他にもあります。
家相をどの程度考慮するかは施主次第ですが、気になる場合は
生活がしにくくならない範囲で取り入れてはいかがでしょうか。

建築家との家づくりなら、家相についてのご要望も踏まえて、
家族やライフスタイルに合った間取りを考えていくことができます。

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