木材高騰【ウッドショック】って?

ウッドショック その他

そもそも、ウッドショックって?

2020年に海外で木材価格が高騰したことで、
2021年の3月頃から日本の住宅業界でも、
輸入材の価格の高騰や調達の問題が騒がれ始めました。
ウッドショックとは、木材の価格高騰や品不足を
1970年代に起きたオイルショックになぞらえた呼び方です。
2021年5月時点で、輸入材の価格は従来の1.3~1.8倍程度に
値上がりしています。

輸入材の高騰の影響

また、輸入材の高騰の影響から、国産材も値上がりする
事態を招いています。
日本の戸建て住宅は木造が中心ですが、木材の自給率は低く
4割程度に過ぎません。6割程度を輸入木材に頼っているため、
木材が入手しにくくなったことで、住宅建設で工期の遅れや
住宅価格への転嫁といった事態が起きています。

↑ツーバイフォー工法は、ほぼ輸入材

米国の住宅需要の増加など 複合的な要因にて起きている

ウッドショックの主な要因は、米国での住宅需要の増加です。
米国では新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、
2020年4月までは住宅建設が落ち込んでいました。

しかし、その後、テレワークが定着したことで都市部の
マンションから郊外への戸建てへの住み替えが増加しました。
米国は新築住宅の流通数が少なく、住宅流通量の約8割を
中古住宅が占めているという流通構造です。

しかし、郊外の戸建ての需要が増大したことで中古住宅の
在庫が大幅に減少し、新築住宅の需要が急増したのです。
また、米国では金融緩和によって住宅ローン金利が
歴史的低水準となったことも、住宅ブームを巻き起こす
要因となりました。

さらに、もともと米国では自分で自宅の手入れを
行うことが定着しているため、巣ごもりによるDIYのための
木材需要も増加しました。
これにより、米国では2020年7月には木材価格が
3倍に高騰しました。
また、国内需要を優先するため、日本への木材の輸出が
減少しているのです。

中国国内の需要増加も

また、中国でも住宅需要が増加していることから、欧州では
米国と中国への木材の輸出が増加しているため、欧州からの
日本向けの輸出も減少しています。日本は木材の規格が
特殊なため、優先されにくいという事情もあります。

このほかにも、世界的な輸出量の増加による海外輸送用の
コンテナ不足から、海上運賃が値上がりしていることも
影響しているなど、ウッドショックは複合的な要因によって
引き起こされています。

なぜ国産材への切り替えが進まないのか

現状では木材の6割程度を輸入に頼っているとはいえ、日本は
国土の約7割を森林が占めるほど、豊富な木材資源のある国です。
「だったら国産材を使えばよいのでは?」といった疑問が
わくのではないでしょうか。

しかし、国産材の流通量をすぐ増やすのは難しいという現状があります。
日本では戦時中に森林が無計画に伐採されたため荒廃した
状態になり、戦後には住宅需要の増加から伐採が進みました。
木材の需要に対応するため、国は人工林を拡大する施策を
講じたものの、木が成長するまでには30年~50年がかかり、
適切な管理が必要です。

そんな中、1960年代の高度経済成長時代に宅地開発によって
住宅需要が急増すると、国産材だけでは不足することから、
海外からの安価な木材の輸入が本格化しました。

一方で、林業は従事者の高齢化と国産材の需要の低下により、
適切な管理が行われず、衰退していきました。
急に生産量を増やそうとしても、林業は通常は年単位で伐採の
計画が行われていて、急に人材を機材を確保することはできません。
人材を確保するだけでも半年程度はかかるとされ、木材を乾燥
させるための製材工場の乾燥機も限られています。

また、林業は補助金によって成り立っている面からも、
急に伐採を進められないという難しさがあります。

↑林業、伐採した丸太のイメージ

国産材では強度が足りない事も

また、輸入材が用いられるのは、国産材は特に強度が求められる
梁などに使用できる木材が少ないとことも理由の一つです。
梁にはベイマツやレッドウッドが用いられることが多く、
国産のスギで代替すると強度が劣るため、梁を太くするために
設計変更が必要になります。

こうした理由から、ウッドショックが起きたからといって
すぐに木材の供給量を増やすことは難しく、今から梁に
対応できる樹種の木の植林を始めても、供給できるのは
30年~50年後です。
しかし、そこまで先の見通しは難しく、ウッドショックが
収まれば、また輸入材に頼る可能性もあることから、
生産者は特段の手立てを取りにくいのです。

住宅業界への影響は①

ウッドショックは日本の住宅業界に、住宅価格や
工期の面で大きな影響を及ぼしています。
ただし、豊富な在庫を抱えているハウスメーカーなど、
まだ影響が出ていない会社もあります。

プレカット会社とのこれまでの取引による関係性によって、
木材の調達のしやすさは異なることからも、建設会社によって
ウッドショックの影響の度合いは異なります。

↑プレカット工場に積まれている柱材

また、高額な費用となる住宅の建築コストに占める割合を
踏まえると、価格面の影響はそこまで大きなものではありません。
木造住宅の工事費用で木材が占める割合は1割程度のため、
その1割に対してのみ、木材の価格高騰が影響することになります。
そのため、ウッドショックによって、家が買えないくらい高くなる
といった事態になることは考えにくいです。

住宅業界への影響は②

もともと国産材をメインに使っていた会社は
影響が小さい一方で、ローコスト住宅を扱うハウスメーカーや
建売住宅を扱うビルダーなど、安い輸入材に頼っていた会社ほど、
販売価格をアップせざるを得なくなることが考えられます。

それよりも木材調達の見込みが立たず、工事請負契約を結べない、
あるいは工事に着工できる時期が遅れるケースが起こることの方が
大きな問題となります。

賃貸住宅の引っ越しのタイミング、あるいは買い替えの場合の
現在の住まいの引き渡しのタイミングよっては、想定外の出費が
発生する可能性があるためです。

実際のところでは、既に工事請負契約を締結しているケースでも、
工務店が木材価格の値上がり分を負担することが難しいことから、
木材価格の上昇分の転嫁や工期の遅延に関して、合意書を結んでから
着工するケースが起きています。

また、これから工事請負契約を結ぶにあたっては、木材の調達時期や
価格の不確定要素が大きいことから、工期や請負金額の変更の
可能性に関する合意書の締結を条件とする工務店もあります。

ウッドショックによって、注文住宅を建てる施主の一部は不安定な
立場に置かれる事態となっているのです。

この影響はいつまで続く?

木材価格の高騰は2021年6月の段階ではまだ続いていて、
7月、8月も上昇が見込まれています。

ただし、ウッドショックの要因の一つである、海外輸送用の
コンテナ不足は解消に向かっているとされています。
また、木材の仕入れや加工を行うプレカット会社の中には、
商社を通さない独自のルートによる調達も行うことで、
国内需要に対応する動きもあります。

しかし、米国の住宅ローンの金利はまだまだ低い水準では
あるものの、上昇傾向が見られますが、経済が回復することで
住宅需要が続くとするとみられています。

先行きはまだまだ不透明であり、日本への木材供給がすぐに
回復することは考えににくいことから、ウッドショックは
2021年いっぱいは続くのではとみられています。

当面の間は木造住宅を建てることを考えたら、木材の
調達状況について、確認が必要といえます。

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