住宅ローン減税って。
住宅ローン減税は、住宅ローンを利用して住宅を
購入したときに、所得税などの控除を受けられる
お得な制度です。
消費税の10%への増税後は、控除期間が13年間に
なるなど拡充されていました。
現時点では、2022年の住宅ローン減税は不透明ですが、
2021年の現行制度について解説していきます。
住宅ローン減税とは
正式名称を「住宅借入金等特別控除」といいます。
住宅ローン減税とは、住宅ローンを借りて、マイホームを
新築や購入、増改築などする場合に、年末のローン残高の
1%が所得税から控除される制度です。
控除額には上限が設けられていますが、所得税から控除
しきれない場合には、一部が住民税から控除されます。
住宅ローン減税は何度も期間の延長と改正を繰り返しています。
住宅ローン減税によって所得税が控除される期間は
10年間であり、現行制度では2021年中の入居までが対象です。
ただし、2019年10月の消費税引き上げによる経済対策を
踏まえて、13年間に延長された特例措置が、コロナ特例に
よって延長されました。
注文住宅は2021年9月30日まで、分譲住宅は2021年11月30日
までに契約して、2022年末までに入居した場合には控除期間が
13年間になります。
注文住宅は既に控除期間が13年間になる契約の時期を
過ぎていますが、分譲住宅は11月までに契約をすれば、
入居時期の要件も満たすことで、13年間控除を受けられます。
減税の対象者の条件
住宅ローン減税は対象者や住宅の要件が決められています。
・住宅ローン減税を受ける人が引き渡し、または工事完了
から6カ月以内に居住すること。
住宅ローン減税の対象となる住宅への居住実態は、
住民票によって確認されます。
・住宅ローンの借入期間が10年以上
・合計所得3000万円以下
合計所得とは、給与所得や事業所得、公的年金による
所得、土地や建物などの譲渡所得、利子による所得など、
非課税所得を除いたすべての所得の合計です。
夫婦でペアローンを利用する場合には、それぞれの合計
所得が3000万円以下であれば対象になります。
床面積や耐震性能も条件に
・床面積50平米(40平米)以上
原則として、床面積が50平米以上の住宅が対象です。
ただし、2021年の住宅ローン減税では要件の緩和があり、
注文住宅は2020年10月1日から2021年9月30日まで、
分譲住宅などは2020年12月1日から2021年11月30日
までに契約し、2021年1月1日から2022年12月31日までの
間に入居した場合で、合計所得が1000万円以下の人は
床面積40平米以上の住宅が対象となります。
・中古住宅の購入の場合は耐震性能を有している
築年数が一定以下であれば、耐震性能を有していると
みなされます。木造など耐火建築物以外の場合は築20年
以内、RC造やSRC造など耐火建築物※の場合は築25年
以内の建物が対象となります。
築年数がこの年数を超えている住宅の場合は、
耐震基準適合証明書または既存住宅性能評価書
(耐震等級1以上)の取得、あるいは既存住宅売買瑕疵
保険への加入のいずれかによって、現行の耐震基準に
適合していることを示す必要があります。
・増改築の場合は工事費が100万円以上
住宅ローン減税の控除額は?
住宅ローン減税の控除額の計算方法は10年間と特例に
よる3年間では異なります。
また、所得税から控除しきれない分は、一部は住民税
からの控除を受けることができます。
【1~10年目】
年末のローン残高(上限:4000万円)×1%=(最高40万円)
4000万円を上限に年末のローン残高の1%の控除を10年間受けられます。
【11~13年目】
1:「住宅ローン残高または住宅の取得対価(上限4,000万円)の
いずれか少ない方」×1%
2:「建物の取得価格(上限4,000万円)―消費税」×2%÷3
上記の1と2のいずれかのうち少ない方が適用されます。
1~10年目も11~13年目も上限の4000万円は新築・未使用の
長期優良住宅や低酸素住宅は5000万円になります。
住民税からの控除の上限
実際にはもともと支払う所得税の額が住宅ローン減税に
よる控除額に満たないケースが多いことから、所得税
から控除できない分は、一部を住民税から控除すること
ができます。
住民税からの控除額の上限:前年度課税所得の7%
(最高13万6,500円)
手続きの方法は
住宅ローン減税の手続きは、初年度は確定申告が必要です。
入居した年の翌年の確定申告受付期間に、住所地を管轄
する税務署に必要書類を提出します。確定申告の受付期間は、
原則として毎年2月16日~3月15日ですが、住宅ローン減税
などの還付申告は1月から受け付けています。
確定申告書は税務署や市区町村の役所に置いてあり、
手書きで作成することもできますが、国税庁のホームページ
の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、税額が
自動計算されるので便利です。
印刷して税務署に持参するほか、郵送やe-taxによる送信で
提出する方法もあります。
サラリーマンなどの給与所得者で他に所得がない場合には、
2年目以降は年末調整での手続きが可能です。
自営業者は2年目以降も確定申告での手続きとなります。
手続きに必要な書類は
サラリーマンなどの給与所得者が、住宅ローン減税の
手続きに必要な書類を1年目と2年目以降に分けてまとめました。
<1年目の確定申告に必要な書類>
・確定申告書(税務署・市区町村の役所、または国税庁のホームページで入手)
・住民票(市区町村の役所)
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関より送付)
・住宅借入金等特別控除額の計算明細書
(税務署または国税庁のホームページで入手)
・登記事項証明書(法務局で入手)
・不動産契約書や工事請負契約書のコピー
・源泉徴収票(勤務先で配布)
<2年目の年末調整に必要な書類>
・年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書、
給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書(税務署より送付)
・住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関より送付)
1年目に確定申告を行う際には必要な書類が多く手間も
かかります。
しかし、2年目以降は会社で年末調整の書類に必要事項を
記入し、税務署と金融機関から送付される書類を添付するだけです。
住宅ローン減税の注意点
住宅ローン減税の利用にあたっては注意点もあります。
夫婦共働きで住宅ローンを借りる場合は、ペアローンや
連帯債務型、連帯保証型という方法があります。
このうち、夫婦ともに住宅ローン減税の適用を
受けられるのはペアローンと連帯債務型です。
ただし、諸経費や利用できる金融機関、団体信用生命
保険の取り扱いなどに違いがあるため、住宅ローン減税
だけにとらわれずに検討した方が良いかと思います。
また、住宅ローン減税は自己居住することが条件の
一つのため、転勤によって本人も家族も住民票を移すと、
適用の対象外になります。転勤から戻ってきた後に残存
期間があれば、再び住宅ローン減税の適用を受けられます。
ただし、適用を受けられなかった期間の分、延長される
わけではありません。
また、単身赴任で家族の住民票は移していない場合には、
そのまま住宅ローン減税の適用を受けられます。
それから、ふるさと納税を併用する場合には、住宅ローン
減税で控除される額が減る可能性がある点に注意が必要です。
ふるさと納税を利用すると、課税総所得からふるさと納税の
寄付額を控除して、所得税や住民税が算出されますが、
それによって所得税や住民税が減額されています。
そのため、所得税や住民税の額や寄付金額によっては、
住宅ローン減税で控除できる額が減り、恩恵をさほど
受けられないことがあります。
おわりに
今回、紹介したのは2021年の住宅ローン減税です。
2022年の税制改正では、マイナス金利政策によって
住宅ローン減税の控除率よりも住宅ローンの金利の方が
低い逆ザヤが問題になっていることから、控除率が
見直される可能性もあります。
正しい知識を持って、無理のない資金計画を
たてたほうが良いかと思います。